- 進化の歴史 - 『 2 』
≪6≫恐竜的進化、そして終焉へ・・・
 ■1989年・・・設定上で展開していた共和国と帝国の戦い、
いわゆる「中央大陸戦争」は、無敵を誇ったデスザウラーを
マッドサンダーが打ち倒し、共和国の勝利で幕を閉じます。
そこへ突如新たな敵としてガイロス皇帝率いる謎の「暗黒軍」が出現。
「ゾイド新世紀」と銘打ち、暗闇で光る蓄光素材とゴムチューブを多用した
新型ゾイド「デッド・ボーダー」と「ヘル・ディガンナー」が発売。
ゾイドは新しい展開、いわゆる旧ゾイド第三期シリーズへと移行しました。
暗黒軍、デッド・ボーダー
共和国、帝国とも違う
まったく新しいデザイン
後に「大陸間戦争編」と名付けられたこのシリーズでは、
共和国側の「カノンフォート」を最後にゼンマイゾイドが完全に消滅。
ほとんどのゾイドが電動となり、最低価格も1300円となります。
各商品に同梱された
ゾイドのミニカタログ
そしてゾイドとは別のシリーズで過去に展開していた「サイテックス」のノウハウを取り込み、
「パワーコネクター」という企画を採用、別売の「グレードアップパーツ」により
武器が連動可動したり目が電飾で光ったりするギミックを登載した新ゾイド、
グレードアップゾイドが誕生、以後同企画のゾイドが次々にリリースされます。
しかしその結果ベースとなるゾイドは単品ではギミックに乏しく、
規格を統一したゆえにモチーフが偏る結果となりました。
武器に変形、ゾイドと合体するTF(トランス・ファイター)ゾイドも登場。
580円という低価格帯を復活させたシリーズだったのですが、
ゾイドの最大の売りであった動力可動ギミックがオミットされており、
共和国側の3体のみが発売してシリーズ終了となってしまいます。
暗黒軍の電動ゾイド、ジーク・ドーベル
別売りのグレードアップパーツでパワーアップ
バトルストーリーは5冊目が発売。マッドサンダーでも勝てない
暗黒軍の超大型空戦ゾイド、ギル・ベイダー打倒のため、
奮闘する新生共和国軍と決戦ゾイド、オルディオス完成までが
「新ゾイドバトルストーリー」として描かれました。
 ■1990年・・・初の変形する電動ゾイド、ガン・ギャラドや
新生共和国史上最大最強の決戦ゾイド、キングゴジュラスが発売。
そして1990年11月・・・発売から7年間続いたゾイドは
暗黒軍側の「デス・キャット」発売を最後にその歴史を終えました。
バトストのラストは巨大彗星が飛来し、月の1つに激突するという
カタストロフエンドで、両軍の戦いは決着を見ないまま集結します。
最終商品、デス・キャット
家庭用ゲーム機が浸透し、子供達の玩具離れが加速した時代、
一時代を築き、長年愛されてきた「メカ生体ゾイド」でしたが、
玩具業界自体の衰退と共に、その姿を消していきました。
最強ゾイド、キングゴジュラス
サウンドギミックを搭載し
値段も7980円と最高額に
余談:小学館の学年誌(一〜三年生)で連載されていたバトストは、
それぞれ異なる展開、異なるエンディングを迎えたのですが、
新ゾイドバトルストーリーの続きは発売されず今も未完となっています。
未完のままのバトルストーリー
≪7≫ゾイドの系譜、Zナイト、ゼブル・・・
 ■1991年・・・ゾイドの世界観を引き継いだ新しいキャラクター企画、
「装甲巨神Zナイト」(そうこうきょしんズィーナイト)がスタートします。
設定はゾイド星から地球人が持ち帰った金属生命体を核にして作られた人型機動兵器、
6体の「装甲巨神」(ゾイドアーマー)をめぐる遥か未来の地球人類達の戦い。
初期のゾイド以上に設定関係を強化し、世界観、人物設定も普通のアニメ並み、
日本サンライズ(現サンライズ)による高品質のプロモアニメも作成され
ゾイドに代わるアクショントイとして大々的に打ち出されました。
余談:アニメはキャラデザ、作画監督に梅津泰臣氏を起用、庵野秀明氏も原画で参加。
装甲巨神は世界中の鎧戦士がモチーフ、全商品電動2足歩行が最大の売りでした。
ゾイドと同じようにスナップフィットの組み立てキットで、ゴムキャップも一部使用。
コクピットにもゾイドと同様の兵士が搭乗し、スケール感の保管がなされていました。
第2弾にはバイキングモチーフの装甲巨神「マリンカイザー」もリリースされます。
装甲巨神Zナイト
ところが、次にリリースされた低価格帯の敵量産型バトルアーマーは、
装甲巨神に比べ価格に比例して全高が小さく、ギミックも少なめで、
ゾイドから続いたコクピットに兵士が搭乗するというギミックが消滅してしまい、
バトルアーマーシリーズは敵3体発売で終了、売り上げ的には苦戦が続きました。
装甲巨神マリンカイザー
そこで更なる低価格帯路線へのシフトを試み、電動2足歩行はそのままに
価格を1000円まで抑え、メタルフットシリーズとして3種を同時発売。
しかし低価格ゆえ電動ギミックは全て共通、全高は装甲巨神の半分で、
フィギュアも付属せず、巨神と並べて遊ぶにはあまりにも無理がありました。
この問題を解決するため、なんとメインであるはずの装甲巨神を設定上で封印、
巨神に乗っていたパイロットも巨神をモチーフにしたメタルフットに搭乗し、
設定はハードな世界観から一転してヒロイックなものになりました。
最終的には当時玩具業界全体で盛り上がっていた格闘ロボットブームに乗り、
リモコン操作で戦うことのできるバトルメタルフット2種を発売。
しかし他の格闘ロボット商品と同様に、定着することなく消えていきました。
主人公ランスのライバル
ゼルダンが操るギルガと
ギルガがモチーフの
メタルフット、ゼルガイア
ゾイドの最後とは逆に商品展開が低価格帯へと移行したあげく、
結局メインであるはずの装甲巨神は2体しか発売されずに2年半でシリーズ終了。
玩具業界自体も更に勢い付く家庭用ゲームブームに押され下火になっていきます。
余談:書籍はケイブンシャから2冊出ましたが、第3第4の巨神登場までで、
小学館のストーリーでも残り2体の巨神の姿は明かされないまま終了しました。
 ■1990年代前半・・・ゾイドを再利用した2つのシリーズがリリースされます。
ひとつはスーパーのお菓子コーナー等で販売される、フックトイ形式にした
「ゾイドMZ」と言うシリーズで、小型ゼンマイのグランチュラとザットンが発売。
トミーの子会社から発売となりましたが、残念ながらシリーズ化しませんでした。
もうひとつは24ゾイドを模型流通でリニューアル販売した、
「生体バトルビークル、ゼブル」シリーズ。模型と同じかぶせ箱形式にし、
ボックスアートには高荷義之氏を起用、白だった帝国24ゾイドは、
パールレッドの成型色と、クリアグリーンのカメラアイに変更されました。
フィギュアは塗装済みの完成品から変更し、未塗装のランナーのまま付属。
帝国ゾイドが4体、共和国ゾイドが2体リニューアルされて販売され、
好評ならば幻の完全新作も開発される予定でしたが、
残念ながら初回出荷のみでシリーズは終了してしまいました。
ゼブル、ゼーヴァΘ
ゾイドMZ2種
余談:国内では販売終了したゾイドですが、海外でライセンス生産され、
「ZOIDS2」や「TECHNO ZOIDS」としてアジアや北米で展開しました。
≪8≫水面下での展開、復活への胎動・・・
 ■1990年前半・・・トミーにはひとつの転機が訪れていました。
それまでは主力であるトミカとプラレールの安定から、キャラクター商品に対しては、
どちらかと言うと力を入れていませんでした。しかしアニメ作品等のハイエンドユーザー、
いわゆる従来のターゲットとはしない高年齢層からの需要が無視できない域になり、
キャラクター商品の持つ魅力と爆発力を再確認する時期が来たのです。
そこでトミーも、アニメを軸としたキャラクター商品の展開に力を注ぎ始めます。
それと同時にこれまでの商品でもある程度視野を広げ、メインターゲット以外の層にも
マーケティングリサーチを行い、商品展開の参考にするよう動き始めました。
■1990年後半・・・家庭用パソコンの本格的な普及に伴い、ネットによる情報公開が盛んになります。
トミーもこの流れに乗り、新製品の紹介や過去のヒット商品の紹介などを行うようになりました。
そこで、一時代を築いた「メカ生体ゾイド」も再び取り上げられるようになったのです。
当初は社内に残っていたゾイドの画像公開といくつかの設定資料公開だけでしたが、
次第にファンからの要望が多くなり、双方の意見交換が活発になっていきました。
また、ゲームの分野にも力を注ぎ始めたトミーは、新たにCGを制作する部署を設立。
サンプルムービーとしてフルCGのアイアンコングやマーダが市街地で戦うムービー等も作られ、
おもちゃショー等のイベントで公開、ファンの間で話題を呼びます。
ネット公開アピールのため
配布された特製ディスク
設定やミニゲーム等を収録
インターネット上で展開していったコアユーザーに対する様々なサービスは、
次第に復活に向けての確かな足がかりとして静かに、しかし確実に盛り上がりを見せていきました。
 ■1997年・・・トミーは突如東京ゲームショーでゾイドの大ディオラマを展示、
パソコンを設置してネット上でゾイドが盛り上がっている事をアピールしました。
続いてイベントで過去のゾイドをテスト販売、子供達に実際にキットを組んでもらい、
今の時代に受け入れてもらえるのかどうかリサーチを繰り返しました。
余談:この時発売されたのはイグアンやハンマーロック等のゼンマイゾイドのデッドストック。
更にはイベントにてデッドストックと共に海外で販売していたZOIDS2を逆輸入し、
試験的に販売、価格は従来のキットよりも割高でしたがファンの間には好評でした。
平行してテレカやピンズ、オイルライター等の大人向けグッズも限定販売、
ハイエンドユーザーを意識した商品もイベント等で試験販売されるようになりました。
 ■1998年・・・やはりゲームショーでデッド・ボーダーとダーク・ホーンを限定販売。
ファンの間ではゾイド復活がそう遠くない未来に実現するかもしれない、と噂が流れました。
しかしこの時点でファンも予想だにしない大きなプロジェクトが進行していたのです。
改修され使用電池の本数が
1本減ったダーク・ホーン
余談:デッドストックの再販とアナウンスされたデッド・ボーダーとダーク・ホーンは、
実はすでに改修による仕様変更を受けており、厳密には初の復刻版と言えました。
≪9≫待望の復活、そしてアニメ化へ・・・
 ■1999年・・・それは突然発表されました。ゾイド復活&今秋アニメ化決定!
CGとセルアニメの融合、画期的な新技術とCGソフトにより高品質の映像が作られ、
アニメ界の注目と共に、ゾイドは新たな歴史を刻み始めました。
同時にコロコロコミックや電撃ホビーマガジン等の雑誌媒体でゾイドの特集が組まれ、
次世代のアクショントイとして紹介。新旧2世代の注目を集める事になりました。
 ■1999年8月28日・・・「メカ生体ゾイド」改め「機獣新世紀ゾイド」として
リニューアルされたゴジュラスやコング等のゾイド、全12体が一斉発売。
およそ10年の沈黙を破り、ゾイドが完全復活した忘れられぬ日となりました。
世界設定は、巨大彗星が飛来し大陸間戦争が終結してから50年後、
休戦状態に陥っていたヘリック共和国と、暗黒軍改めガイロス帝国が、
新たな戦場となる西方大陸で再び激突するというものでした。
アニメの主人公バンの相棒
シールドライガーとジーク
つづいて9月4日、待望のアニメが土曜18時にMBS制作でTBS系列にてスタート。
ストーリーはコロコロ連載の漫画を原案とし、独自の世界観で展開していきました。
作品とリンクする形でゾイドも次々とリリース、瞬く間に大ヒットシリーズとなります。
余談:アニメゾイド(クラシック)の作画監督を務めた羽原信義氏は
過去に超獣機神ダンクーガの作画に関わっており、この時の経験が、
シールドライガー等の動物メカを動かす参考になったと言います。
アニメの影響でキットと同一スケールのアニメキャラフィギュアや、
一部塗装済みのパーツを組み込んだいわゆるアニメ基準のゾイドも登場。
書籍では学年誌に代わって主にコロコロコミックで展開していた
ジオラマストーリーを、旧時代同様再編集した「ゾイドファンブック」が発売。
巻末には以前発売していたゾイド、全97体のカタログを掲載する等、
ゾイドがリメイク商品で、長い歴史がある事が紹介されました。
塗装済みパーツに新規パーツ、
アニメフィギュアが付属した、
コマンドウルフ、アーバイン仕様
旧ゾイドが続々復活
セイバータイガー等
一部は商品名も変更
 ■2000年1月・・・遂に新世代の完全オリジナルゾイド
ガイロス帝国の「ジェノザウラー」がイベントで先行発売。
瞬く間に完売するほどの大人気となり、ゾイドは再び
メジャーアイテムとしてファンの間に浸透していきます。
つづいて主人公バンの愛機だったシールドライガーが
新規パーツ使用で「ブレードライガー」へとパワーアップ。
それまで割りと無骨なイメージだった共和国ゾイドが、
シャープで、よりヒーローらしいデザインとなっていきました。
シールドのパーツを流用しつつ
生まれ変わったブレードライガー
復刻ではない完全新規のゾイド
「虐殺竜」ジェノザウラー
余談:新世代のゾイドと区別するために、ファンの間で
アニメ化以前のゾイドは「旧ゾイド」と呼ばれるようになります。
アニメは好評により延長が決定。成長した主人公達が正式軍人として活躍する
ガーディアンフォース編がスタート。合わせて旧ゾイドの「ディバイソン」が復活。
また、旧時代に限定販売されたゴジュラスとアイアンコングのMK−2限定型が、
若干カラーを変更してゴジュラス・ジ・オーガ、アイアンコングPKとして販売。
新世代のゾイドは、リューズをなくしたHIゼンマイゾイドの「ハンマーヘッド」
主人公のライバルが駆るジェノザウラーのパワーアップ版「ジェノブレイカー」
2スピードアクションを搭載した新型電動ゾイド「ライトニングサイクス」等、
人気に後押しされて、続々と新商品をリリースしていきます。
アーバインの新たな愛機
ライトニングサイクス
イベントで先行販売された
「魔装竜」ジェノブレイカー
余談:ブレードライガーとジェノブレイカーは全国のショップで
購入特典として特製パーツが貰えるキャンペーンが展開されました。
8月には復活後初のゲームソフト「邪神復活ジェノブレイカー編」がゲームボーイで発売。
旧ゾイドを網羅した内容と、初のゲーム同梱ゾイド「レッドコマンドウルフ」が大好評で、
急遽年末の出荷分からは「ミッドナイトブルーコマンドウルフ」が同梱して販売されます。
11月に発売したプレイステーション用SLG「ゾイド・帝国VS共和国」には、復刻版の
「レドラーゼネバス帝国仕様」が同梱される等、ゲームの世界でも話題を振りまきました。
 ■そして2000年10月8日・・・伝説となったイベント「大ゾイド展」が開催。
オリジナル玩具の単独イベントとして、ファンは元より関連業界も大いに注目。
初日は朝早くから物販目当ての長い行列ができ、入場者が予想を遥かに上回る事態に発展。
大ゾイド展のチラシ
入場制限ができ、数時間待ちのあげく限定ゾイドは即座に完売。
急遽受注生産による予約販売に切り替えて対処するなど、
一部で混乱が生じるほどの人気ぶりで、会場内は大混雑が発生、
二日目も混雑ぶりは変わらず、子供はもちろんアニメファン、
旧時代からのファンと、多くの家族連れで大盛況の2日間でした。
この時先行販売されたファン待望の復活ゾイド「ウルトラザウルス」が
10月下旬に発売すると、この年の年末玩具売り上げ1位を記録し、
ジェノザウラーやブレードライガー、デスザウラーが今期ショップの
売り上げ貢献人気アイテムとなる等、ゾイドはまさに昔の黄金期に
匹敵するほどの大人気コンテンツになっていったのです。
人気商品となった
ウルトラザウルス
大混雑のイベント会場の模様
きぐるみジークは子供達に大人気
余談:大ゾイド展では歴代ゾイドに海外販売ゾイドまで展示され、
マッドサンダーやギル・ベイダー等未復刻のゾイドにも注目が集まりました。